| +Hard To Say I'm Sorry−前編−+ |
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会いたくなかった。 会ってしまえば自分が何をしてしまうかなんてわからなかったから。 だから会いたくなんてなかったのに………。 「……………。」 カミサマってやつはどうしてこうイジワルなのかねー。 毎日クロスに祈りをこめてるってるってのにまだ何か足りないっていうのか? あーあ、ずっと避けて通ってきたってのに……。 もしやこれって逃れられない運命ってやつ? 五飛と待ち合わせしていた駐駐車場に向かい、車の前まで行くと一番会いたくないヤツがそこにいた。 溜め息を吐きたい気分をグッと堪えようとしたがそれは無理で、 肩がガクッとならなかっただけマシだと思ってほしい。 平静を装ってポケットからキーを取り出しピッと鳴らせばロックが解除される。 運転席のドアを開けそのまま乗り込もうかどうか迷ったが、流石にそれはヤバいかと思い留まった。 相手の顔はなるべく見ず運転席を覗き込みながら声を掛けた。 「なんでオマエがここにいんの?」 セリフに刺があるのは仕方がない。 「お前と同じだ。」 ああ、やっぱり。そんなことだろうと思ったぜ。 そのまま運転席に乗り込むとヤツも当たり前の様に助手席に乗り込んでくる。 ドアが閉まったのを確認してエンジンキーを回す。 「五飛……。」 「?」 「五飛だったと思うんだけど。」 今日の任務の相手。昨日まではそーだった。 「アイツは別の任務が入った。急遽俺が変わりに寄こされた。」 「……そーですか。」 クソッ五飛のヤツ!何の任務だよ。とここで悪態吐いてても始まらねぇか。 ギアをドライブに入れサイドブレーキに手を掛ける。 「で、内容はアタマに入ってるのか?」 「問題ない。」 そーだろうとも。聞いたオレが悪かったよ。 「んじゃ行きますか。」 サイドブレーキを下ろしアクセルを踏み込んで出発進行。 車は目的地へ向かってまっしぐら。 オレの心もどん底へとまっしぐら。 こんな秋晴れのいい天気だってのになんでオレは無口で無愛想なヤローとランデブーしなきゃならないんだか。 運転の合間に横に座ってるヤツをチラッと見ればドアに肘をつき外の景色を眺めている。 久しぶりに間近で見るとやっぱキレイな顔してるよなー。なんて思ってしまった自分に凹む。 赤信号にブレーキを踏むとゆっくりとヤツがこっちを向いた。 どうした? 口に出さずとも目が語ってる。 「別に。」 敢えてこっちは口に出してやってまた前を向いた。 どうやら知らず知らずの内に意識が隣に向かってるらしい。 落ち着けオレ!と心の中で呪文の様に繰り返しても一向に落ち着かない所か益々意識してしまう。 おまけに普段のオレなら思考よりも先に口が動いてるんだけど今回ばかりはその口がヤバい。 何を話しても自滅しそうな勢いだ。 車内はオレが黙ってるせいかずっと無言が続いている。 段々耐えられなくなってきたかも。とは思うものの何を話せばいいのか正直わからない。 ダメだ。ダメだダメだ! こうなったら任務のおさらいでもしよう。ああそうしよう。 何とか意識を隣りから切り離す。 今回の任務はホントは五飛とだったんだよな。 それなのにアイツ、オレを振って違うヤツと浮気しやがった。 文句の一つや二つ言ってやらないと気がすまない。 ってか今回の任務はわざわざオレが出るまでもないと思うんだけど。 何とかって言うヤツと会って(名前なんだっけ?)食事して話つけてきたらいいんだよな。 そんな簡単な事なのに。 「なんで二人もいるんだよ。」 「……何の話だ。」 おっといけねぇ。最後だけ思わず声にでちまった。 「えっと、今回の任務に二人もいらないんじゃないかなーって……。」 語尾が小さくなっていくのはこの際無視だ。 「任務は最低二人以上と組む事が規則として決められている事はお前も知っているだろう。」 「……わかってるよ。」 わかってるんだよそんなことは。 オレが言いたいのは、なんでお前と組まなきゃいけないかってことなんだよ。 ずっと会わないようにしてたのに……。 そもそもコイツとは部署が違うはずなのに、なんでホイホイ呼ばれて出てくんだよ。 折角顔を合わさないようにしてやってたのに。 オレの苦労が水の泡だ。 それ以上何も言わないオレにアイツも何も言わなかった。 また静寂が訪れる。 「あそこで休憩するからな。」 丁度いい休憩場所を見つけて有無を言わさず車をそこに止める。 エンジンを止めて何も言わずにオレは一人で外に出た。 人気のいないところまで歩いて携帯電話を取り出してダイアルを押す。 数回のコールの後素気ない声で相手が出た。 『何だ。』 「何だじゃねーよ。何でアイツなんだよ。」 『俺に言うな。決めたのはレディだ。』 「………。」 『どうした?何か不服か?』 声が笑ってるっての。 「面白がってるだろ?」 『面白い事があるのか?』 「……もういい。じゃあな。」 『デュオ』 電話を切ろうとしたけど呼び止められる。 「何だよ。」 『いい加減素直になれ。』 「何だよそれ。」 『わからなければいい、じゃあな。』 言いたいことだけ言って一方的に電話は切れた。 何なんだよ、素直になれって……。 「できることならとっくにやってんだよ五飛。」 ここにはいない相手に向かって言っても虚しいだけだった。 いつ頃だったかな、この気持に気づいたのは。 もしかしたら初めて会ったその日からってやつかもしれない。 追いかけて追いかけて、それでも振り向いてもらえなくて、でも諦めきれなくて今に至る。 初めはほんの少しの好奇心。 それがいつの間にか恋愛感情に変わってた。 オレはさーこんな性格だから男も女もオッケーなんだけど、アイツはそうじゃないだろ? むしろ嫌われてんじゃないかと思ってる。いや完全に嫌われてるだろな。 だからこれ以上嫌われないように、好きにならないように距離置いてたんだけどなー。 それに会ったら抱きしめてキスしたいとか思っちまうあたりヤバいだろ流石に。 久しぶりに会ったら益々美人になってるし、黒いスーツがストイックっていうか、 細い腰がまたセクシーっていうか……。 って何言ってんだオレ……。あっ想像したら腰にキタ。 ともかくそういう訳だから会いたくなかったんだよ。 そろそろ待たせるのも悪いなと思って車に戻ったらそこにはもうアイツが座っていた。 もしかしてずっとそこにいたのか? 「悪かったな。」 一言謝罪の言葉を述べれば、別にとだけ返ってきた。 「ずっとそこにいたとか?」 「……いや。」 「そっか。んじゃ行くぜ。」 相変わらず必要最低限の会話しかしないヤツだ。 まぁ会話が成り立ってただけマシか。 その後はもう一言も言葉を交わす事無く目的地までまっしぐら。 それから30分程で目的地に着いた。 そこは高級そうなホテル。 正面まで車で来るとさっとボーイが現れた。 一言二言会話を交わし彼に車を預ける。 そしてフロントまで歩き今日のアポの確認を取る。 そこでトラブル発生だ。 どうやら飛行機のエンジントラブルで相手がまだ到着していないらしい。 それどころか明日にならないと飛行機が飛ばないらしく、今日はここに泊まれと言う。 「おいおい、何とかならないのか?」 「申し訳ございません。部屋の方はこちらで用意させて頂いておりますので。」 どうすると後ろを振り返れば仕方がないだろうという視線が返ってきた。 オレはカウンターに行儀悪く肘をつき本日2回目の盛大な溜息を吐いてやった。 続 あとがき この話は2年前のオンリで出したコピ本から加筆修正(と言っていいものか激しく疑問)したものです。 コピ本でのタイトルは『素直になれなくて』でした。 今まで英語でタイトルつけてるからどうしたものかと考えて英語に直す。 わかる人にはわかるタイトル。あの曲から アプするにあたって読み返したら全く話を覚えてなかったと言うねコレ(笑)←笑えないよ。 それでも新鮮さよりも恥ずかしさが勝りました……。 少部数しかコピらなかったので読んでない方の方が多いはず?です! 恥を忍んでアプ。次で終わります。 2009.05.12 葵 |